Exhibition 展覧会情報
森谷雅人「収集の行方」

森谷 雅人「 収集の行方 」
2014年10月28日(火) 〜 11月8日(土)
13:00〜19:00 日・月曜 休み
作家ステートメント

社会では個人情報集めが盛んである。クレジットカード、交通カード、ポイントカード、それにブラウザー、SNSをソースとして名前、住所、アドレス、電話番号、職業、収入、行動範囲、さらに購入商品やよく見るサイトの履歴、友人関係など手に入る情報なら何でも収集され記録されているらしい。それらを分析することで個人の消費行動の傾向をとらえ、新たなセールスをしたり、新製品の開発などに利用するのが目的とされている。もし、その分析がさらに高度化して、その個人の、性格、学歴、家族構成、政治的指向、はたまた性癖まで推測された上に別の目的で管理されるとしたら、それは不気味で不愉快だ、などと言ったとたんに「神経質」「自意識過剰」が付け加えられて記録されるだけなのだろう。
個人情報を収集し記録し、分析する行為は、写真家が定点的にひとつの街の風景を撮影し続ける行為と収集、記録、という点だけは同じだ。ただ、分析が目的ではい。展示のためにセレクトはするが、分析は展示を見るものに任せている。
同じ街を撮影し続けていると道も覚えるが、それぞれの町内の雰囲気もわかってくる。面白い風景がある場所も定番化してくるので、撮り始めた頃の様な緊張感や興奮はない。変化を求めて歩いたことのない道に入っていったり、いつもと逆の方向から歩いたりするが、歩く距離が増えるだけという日も少なくない。同じところを行ったり来たりするので住人から不気味で不愉快に思われやしないかと不安になり、撮影に集中できないこともある。そうして集めた風景の大量な積み重なりに対して、自己満足的な達成感はあるが、何か有益なものを生み出した手ごたえはそれほどない。
撮影は早朝から始めるが、その街の木曜日だけ様子が違う。行く先々で空き缶の詰まった大きなビニール袋をいくつも縛り付けた自転車を、曲芸師のように操る男たちを見かけるのだ。彼らは缶、ビンの収集日には、写真家より早く仕事にかかる。街のあらゆる集積所の缶を選別し回収する。缶を踏み潰しかさを減らしてビニール袋に詰め込む。秘密の場所に隠してあったほかの袋と一緒に自転車に乗せて、金属専門の産廃業者のもとに向かう。その間の行動に人目を気にする様子は一切ない。いくらかの金を手にすると、近くのコンビニに行き酒を買い、路上に腰を下ろして飲み始めるのだ。
「屑屋の酒」だ。写真家はその表題のついたボードレールによる一編の詩と、シュルレアリストに支持され続けている、屑屋に関して叙述したその詩人の散文を思い起こす。屑屋は自分自身であり、ここは第二帝政時代のパリなのだ、という夢想とともに、全能感を取り戻し、ふたたび街へ、彼らと同じ道筋を、風景の収集へと帰っていく。
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