Statement

数年でいくつかの国といくつもの街を訪れたが、東京と大きな違いはない。道すがらぼんやり人家を見るに、植物、壁、窓枠、残置物、ゴミ…経度や緯度を問わずどこに行っても既視感があるのは、グローバリゼーションの功罪などではない。おそらく人の暮らしとは根本的に貧しいものなのだ。
貧しい類似の光景の積み重ねは、しかし私の社会への関心や個人的な経緯を表さない。写真は個人に依拠されることを許さず、「ところで」と積み重なっていくことしかしない。「ところで」には言葉としての強度が無いので、「ところで」を伴った写真を百枚集めても脆弱なままだ。写真に写った残置物と、積みあがった写真の束はほとんど同じ。だが、この脆弱さの積み上げこそが、言葉の権力から私を自由にしてくれるのではないかとまだ期待している。