ALTERNATIVE SPACE The White

The White Report 月間ウェブマガジン

The White Report 2014年 10月号  毎月20日更新

–目次–

There is a method in our madness.
〜我々の狂気には筋が通っている〜
澤田 育久
There is a method in our madness. 〜我々の狂気には筋が通っている〜
澤田 育久 (写真家)
「だが妙だ/仮面を作ると変わった/邪悪になった/怪物だ」
映画”ダークマン”より

映画の中で主人公は自分自身の内面の変化をこの様に表現します。また、ニーチェは著書『善悪の彼岸』の中で 「怪物と戦う者は、みずからも怪物とならぬように心せよ。汝が久しく深淵を見入るとき、深淵もまた汝を見入るのである」と述べています。
カメラを持って撮影しながら歩いている時、自分自身の中にある種の変容を見出すことがあります。それは全能感ともいえる歪んだ感覚であり、社会生活を営む自分と作品に向かう自分を決定的に分かつものだと思います。ファインダーを覗いている時は心的にも物理的にも外界から遮断された状態であり、対象をフレーミングによって恣意的に操作し、独善的に意味を置き換えていく作業は確信的な社会性の放棄であり、実際撮影している時は普段なら超えないであろう領域をやすやすと超え、了解している事項でさえ無意識のうちに反故にして対象に向かって行くことさえままあります。また、様々に読み替えることが可能な写真の曖昧な指示性を利用することによっていくつもの自分を装う作業は、自己発見と自己喪失を同時に目指すものであり、撮影行為とその結果としての写真を媒介して現れるものは自分自身でもコントロール出来無い何か怪物めいたものなのかもしれません。