Exhibition 展覧会情報

Room #202 #205
日焼け派 第三回展覧会
齋藤春佳 松本玲子 佐野 陽一 澤田育久
「復路的反射角/きた路のはずれ」
2025年06月10日 〜2025年06月28日
日曜・月曜休み 13:00~19:00
トークイベント
2025年6月21日(土) 17:00 定員:20名(先着順) 無料(申し込み不要)
登壇:梅津元(キュレーター/批評家) 齋藤春佳 松本玲子 佐野陽一 澤田育久
@halcamit
@reikopek
@sanoyoichistudio
@_ikuhisa__sawada_
Overview
このたび、The Whiteにおいて日焼け派による展覧会
き
た
復路的反射角
の
は
ず
れ
を開催します。
日焼け派とは、齋藤春佳と松本玲子の2人が発起人となり、社会的言語で認識可能な有用性に依拠しない作品を「描かれたプール」(例:絵に描いた餅)になぞらえ、それを制作/鑑賞することによってのみ起こる経験や知覚方法の変化――事後的に輪郭が判明する、言語化しづらく身体的ですらあるその事象に「日焼けあとがついた」というセンテンスを用いて焦点を当てる「描かれたプール、日焼けあとがついた」という展覧会を起点とし2020年に結成され、これまでに2つの展覧会※を行っています。
今回、The Whiteにおいては日焼け派発起人の2名に佐野陽一、澤田育久を迎えた4名による絵画と写真の展覧会を行います。
齋藤と松本は対話の中で、佐野と澤田の写真作品を鑑賞する際、写されたものを見る感知の背後に装置/カメラへと向かう”逆走感”があることに思い当たりました。
光がフィルムに焼き付いた瞬間/光景がキャプチャーされた瞬間へ――「逆走しながら見る」――回路が半ば自動的に作動する。
ただし、その復路はもちろん、作品の来し方を正しく辿ることはありません。路をはずれて自走していく。
絵画においても、筆触・色彩を解きほぐしながら見るという逆走が発生します。
絵画制作は、たとえどんなに計画されていたとしても、既にある図像に向かっていくわけではありません。その完成は、ないところに向かっていくような、うろつきの果てに生じます。
画面に筆が触れる瞬間、その筆はない未来とあることになった過去が衝突するダイナミズムで震えている。
一方、写真は既にある光を写すことで生じます。しかし、それが撮られる瞬間は、やはり、予め用意されているわけではありません。その起点では、ない未来とあることになった過去が衝突しているのです。
シャッターボタンを押す瞬間と画面に筆が触れる瞬間。
そのささやかな運動量は、異なる性質の出来事を巻き起こします。
4名の作品は、現実の視覚経験を扱いつつ逸脱しているという点で共通しています。ただし、その逸脱は視覚効果によって現実を歪めるためのものではありません。注視しようとしてもいつの間にか気が逸れているような、日常的な視覚で捉えきれない潜性的世界の姿を感知することを促すものです。
また、展覧会準備期間中、4名の間ではルールのない交換日記が生じていました。
日記において、たとえば、時折混じる《歩いて帰る。》という簡単な記述。
その言葉の内実を経験できるのは、実行者のみです。
人はそれぞれ唯一の実行者として、作品を経験し、各々の経路を辿っていく。
作品への入射を起点にして反射する経験のライン。
制作する体や鑑賞する体がその幅のあるラインとして行き交う時、例えばその交差した重なりに生じる四角い面。
その面は写真であり、絵画であり、そのすぐ隣にあるネガ部分は日焼けあとのように白く炙り出され、また別の区画を生じさせる。いつの間にかギンガムチェックの布のことを話しているのでそれを思い浮かべてもらうとわかりやすいです。ギンガムチェックの中には先述のような異なる性質の四角が潜んでいますが、遠くから見るとその全てはまた大きな一つの面として空間に影を落とします。まっさらな鑑賞者はいないように、まっさらな作品も存在しない。
経験の重なりから浮かび上がる結晶体としての作品が放つ復路は、歩むことで現れ、遡行しながら反射角を描いていく。この展覧会が、きた路をはずれて別の体で世界を知覚する契機の地点になると日焼け派は考えています。
※都美セレクション 2020 「描かれたプール、日焼けあとがついた」(東京都美術館/大木裕之、長田奈緒、齋藤春佳、高石晃、冨井大裕、松本玲子)、「息切れのピース、息継ぎのピース」(Art Center Ongoing/齋藤春佳、松本玲子)
日焼け派HP https://poolhiyake.wixsite.com/website
Biography
齋藤春佳|Haruka SAITO
1988年長野県諏訪市生まれ。2011年多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業。「時間は本当は流れていなくて重力や物体の運動エネルギーの総体が便宜的に時間と呼ばれているだけ」という立ち位置から、出来事を時空間の構造と結び付けた絵画、立体、インスタレーション、映像などを制作。現在東京都在住。主な個展に、「裏からノック」(BLACK CUBE、神奈川、2025)、「立ったまま眠る/泳ぎながら喋る」(Art Center Ongoing、東京、2020)、AP#2.01「飲めないジュースが現実ではないのだとしたら私たちはこの形でこの世界にいないだろう」(埼玉県立近代美術館、2017)、グループ展に、「いったり・きたり」(DDD ART、東京、2025)、「息切れのピース、息継ぎのピース」(Art Center Ongoing、東京 2024)、「レター/アート/プロジェクト『とどく』」(東京都渋谷公園通りギャラリー、東京、2022)など。
松本玲子 | Reiko MATSUMOTO
1987年生まれ。2013年多摩美術大学大学院美術研究科油画研究領域修了。「絵画の中の自由と不自由」「想像と現実の領分」など、「絵を描く」ことの中で起きる現象を比喩的にとらえ、描く対象としてはスケッチや写真に写す間もない光景を選び、絵画という領土の中でその対象がどのような位置を占めうるのか、「描く」行為の問い直しとともに制作している。主な個展に 「Trespass」(RISE GALLERY、東京、2016)、「補記」(リマスタ、東京、2018)、主な展覧会として「超物質的」(アキバタマビ21、東京、2013)、「地上よりはるか下から見上げた灯りが月じゃなくても美しい」(KOMAGOME1-14cas、東京、2016)、「都美セレクション グループ展2020『描かれたプール、日焼けあとがついた』」(東京都美術館、2020)、「息切れのピース、息継ぎのピース」(Art Center Ongoing、東京、2024)、「VOCA展 2025 現代美術の展望―新しい平面の作家たち」(上野の森美術館、東京、2025)など。
佐野 陽一 | Yoichi SANO
1970年 東京都練馬区石神井町生まれ。1994年 東京造形大学造形学部デザイン学科環境コース卒業。1994-96年 同大学研究生(岡村多佳夫研究室)。2004-05 年 文化庁新進芸術家国内研修制度国内研修員。
1996年 東京日仏学院での初個展を経てピンホール・カメラの原理を援用した制作手法へと移行。
「世界を知覚する手がかりとしての写真」をテーマとして作品を制作する。 現在、東京都世田谷区在住。 主な個展に「眩暈の岸」(GALLERY TAGA 2、東京、2024年)、「逍遥」(switch point 、東京、2014年)、「transparency」(ツァイト・フォト・サロン、東京、2005年)、「transparency-flow」(Space Kobo & Tomo、東京、2002 年)など。主なグループ展に「桃源郷通行許可証」(埼玉県立近代美術館、2022年)、「『刹那』よ『止まれ、お前はいかにも美しいから』」(文京区立森鷗外記念館、東京、2015年)、「日本の新進作家展 vol.10 写真の飛躍」(東京都写真美術館、2011年)、「中国現代美術との出会い - 日中当代芸術にみる 21 世紀的未来 -」(栃木県立美術館、2009年)、「VOCA 展 2004 」(上野の森美術館、2004年など多数。
澤田育久 | Ikuhisa SAWADA
澤田育久(1970)東京都出身、写真家。金村修ワークショップ参加。2014 年よりオルタナティブ・スペース「The White」を主宰。カメラが持つ記録装置としての機能を通じて、私たちが曖昧にしか捉えていないもの、あるいは認識の外にあるもののイメージ化を試みる。主な展覧会として、αMプロジェクト2017『鏡と穴-彫刻と写真の界面』vol. 2(キュレーター:光田ゆり / 2017 / αM / 東京)、グループ展「space / guide / volume」(2021 / CAVE-AYUMIGALLERY / 東京)、コラボレーション展「OTHERS」with/ Marc Nagtzaam、 ori.studio( 2023-24 / The White / 東京 、 Fred&Ferry / アントワープ、Archipelago Books / 上海 助成:オランダ王国大使館、国際交流基金)、ビエンナーレ「BIENNALE DE L'IMAGE TANGIBLE 」(2021 / Comfort Mental / パリ)など。主な出版物として「closed circuit 」(2017 / The White)、「substance」(2018 / RONDADE)、「OTHERS segment 2 / 3」(2023-24 / ori.studio)など。