Exhibition 展覧会情報
Room #202
小川浩子「 星取り法行路|wayfaring to the Inner stars」
2026年07月07日 〜2026年07月25日
13:00〜19:00(日曜・月曜休み)
Overview
2017年に制作した「分子時計」は、水槽内で滴下する松煙墨の雫が、広がっては消える噴煙を表象するものでした。それは小川がかつて旅の始まりで目にした桜島の噴煙が着想元となっており、その光景はやがて制作の核となっていきました。松煙墨は松を不完全燃焼させ、採取した煤を膠と練り合わせて精製した墨ですが、本展では精製前の松煙煤を使用した作品を発表します。
タイトルにある「星取り法」とは古代ギリシャに起源をもつ模刻技法です。原型に打った無数の点を計測器で計り、その座標をもとに他の素材に転写し複製をつくります。その過程を小川は、日々のランニングになぞらえ、点(星)は走る場所であり、出会う事物。走行で身体の感覚を把握し、距離や起伏を計測。定期的に出場するレースで空間全体を掘りあげていく実践行為と重ねます。また、遠征先までの道のりには地図や情報で得ることのできない経験をし、記憶を補完しながらつぎなる座標までの研鑽を積んでいきます。
木材や顔料、ロジン製品など多様に変容する松の木から、微細な粒子となった松煙煤を用い、ひと粒ひと粒が存在を示すかのように佇立する新作で構成されます。
Statement
気分転換がうまくできず、走ることで心身を整えはじめた頃、走った距離やペースの確認ができるアプリを知り記録をつけはじめた。走行距離の累計が可視化されると感慨深く、ふと地球はどれくらいの距離で一周できるものかと疑問がわき調べてみた。すると、古代人が夏至の日の影の変化から計算式を導き、地球一周の距離を換算していた、という記事が目にとまった。その計測ができたこと以上に、影の移り変わりで計測に至る気づきの大きさに衝撃を受けた。当然のようにインターネットの検索機能で答えを導き続けては到達できない気づきなのだろうと。
かつて旅した国が不条理に破壊されていく映像が多く流れるようになった。レースの出場がなければその土地を踏むことはなかった懐かしい風景。その場所を再訪できたとしても同じ景色を見ることはできない。ささやかに暮らす日常を、権力による暴力が覆う世界にひと煤を投じてみたい。
Biography
小川浩子|Hiroko Ogawa
埼玉県生まれ。古代ローマで副葬品などとして使用された「涙壺(Lachrymatory)」から着想し発展させた作品と並行して、フィールドワークであるランニングで世界各地のフルマラソンに参加。日々の走行と遠征で身体感覚を深め、世界を立体的に捉える作品を展開している。主な個展
2011 「新世代への視点 / Janus」Gallery Q、東京2017 「分光法」’18 「分子時計」’19 「地形分析」The White、東京
2022 「夜がわたしに語ること」 The White、東京
2024 「南十字星とアストロラーべ」The White、東京
主なグループ展
2007 「神戸ビエンナーレ」兵庫2015 ’17「中国広州日本現代アート展」 53美術館、中国
2015 「Tsukuba International Artist in Residence」つくばアートセンター
2019 ’22 「before sunrise after dark」アズマテイプロジェクト、横浜